ゆるふわブログ

プログラミング,大学の勉強,日常生活で感じたことをゆるふわに書いていけたらなと思います.技術的に拙いところがあっても温かい目で見守っていただければ幸いです.

対等性の具現化、確率漸化式 その一

恩師、青木亮二氏がこのような本を刊行したようである。

入試のツボを押さえる重点学習/数学IAIIB

なかなかに良い本だ。もともと氏は大学への数学に記事を執筆していて、自らの記事をコピーして授業中に配るなどざらであった。(版権は大丈夫なのだろうか?) ゆえに本をパラパラとめくっていると見覚えのある問題が整然と並んでいる。(なお解けなくなっている模様)

この本に陳列されているのは、教科書や一般の各種問題集に掲載された有名かつ論理ギャップの少ない典型題とは一線を画す、珠玉の名問たちである。そのどれもが、一瞥しただけでは ("特殊な" 訓練を積まなければ) 解答が簡単には思い浮かばない、非自明さの芳香を放っている。これこそが数学であると、これこそが力であると、氏の叫ぶ声が聞こえる。ーそして何より重要なことであるがーその問題の主張自体はひどく単純明快なのである。

眠りにつく前にこの本の一節を鑑賞するのが最近の楽しみである。

ここまで、恩師を尊敬するいい生徒を演じてきたわけであるが、実は私はあの男が嫌いである。とても嫌いである。あの男は社会に適応することこそが唯一無二の正しい生き方であると信じて疑わない生粋の「善人」であり、私は随分と屈辱を味わった。私は元来あの大勢の人間が狭い教室へ押し込まれる予備校という空間が嫌いであるが、それに加えてこの恥辱である。それでも私が予備校へと毎度重い足を運んだのは、「この男から何としても数理的技術を盗みとってやる!」という執念、ただそれだけに依っていた。私はあの男を軽蔑していながらも、その数学的技量・センスは誰よりも認めていたのである。それに憧憬すら抱いていたのかもしれない。

さて、氏の悪口はこれぐらいにして本題に入ろう。氏の記事の一節、「何が対等かが問題だ」の軽い解説を書こうと思う。解説記事の解説という随分と不恰好な形にはなるが、"対等性" というものに対する直感の曖昧さ、また確率という分野、特に状態遷移に着目し漸化式を立てて解くという問題の難しさを鑑みれば、わかりやすい解説はいくらあっても多いということはなかろう。多くの受験生がつまづくポイントなのではないかと思う。かつての私もその一人である。

対等性という直感

かつての私は対等性に関するこの記事を読み、真っ先に「本当にそうか?」と思った。
ここでいう対等性とは以下のような "直感" である。

大、中、小の 3 つの玉が入った箱から、玉を順に 2 つ取り出すとき、2 つ目が中である確率は?

10 本中 3 本があたりのくじを次々と引いて行くとき、3 人目があたりを引く確率は?

前者は 1 つ目も 2 つ目も対等であるから  \frac{1}{3}、後者は 1 人目も 3 人目も対等であるから  \frac{3}{10} というのである。本当にそうだろうか???

思うに、直感というのは具体的な計算に裏打ちされていなければならない。ただ「なんとなくそう思うから」というのは究極的には直感でなくただの当てずっぽうである。我々は依拠するところのない思い込みや欺瞞の中で生きているのである。ゆえに往々にして人間の直感は実際とずれる。客観的議論には不向きである。きちんとその正当性が保証されているステップを踏んで、ギャップの小さい、「無理のない」推論こそが必要なのではないか。

ここでは、次のような計算を裏に添えると良いと思う。

「3 つ全てを引くものとして大中小の順列を考える。2 つ目を中で固定すると、順列は  2! 通り。これを全順列  3! 通りで割って、 \frac{2!}{3!} = \frac{1}{3} である。」

「10 本全てを引くものとする。10 本のくじを区別し、順列を考える。3 人目があたりである順列は、3 本のあたりから 1 つを選び ( \binom{3}{1} = 3 通り)、残りを並べる ( 9!)。よって、確率は  \frac{3\cdot 9!}{10!} = \frac{3}{10}。」

単元「場合の数」をきちんと履修した読者諸賢であれば、さして難しくはないと思う。しかし、このような裏付けを逐一考えてみるのが、直感の補正に役立つのではないであろうか。次節はそのような姿勢を持って見ていただきたい。

奇怪なトーナメント

次のような問題を考える。

次図のようなトーナメントを考える。
A〜H の 8 チームがくじ引きで対等にあ〜くに入る。
試合はどちらのチームも勝つ確率は  \frac{1}{2} である。

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(1) B が決勝戦に残る確率  p を求めよ

まず、見ての通りトーナメントは二分木である。枝分かれごとに確率  \frac{1}{2} が乗ぜられていく形である。ゆえに全ての葉の確率を足すと 1 である。("決勝戦" は根の 1 つ後であるから和は 2 となる)
愚直に計算する。
あ〜くのうち、B が固定したある 1 箇所に確率は、等しく  \frac{7!}{8!} = \frac{1}{8} である。
各々について、それに葉に対応する確率が乗ぜられるので、 p = \frac{1}{8}\left(\frac{1}{2^4}+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{2^4}+\frac{1}{2^3}+\frac{1}{2^3}+\frac{1}{2}+1\right) = \frac{1}{4} である。(長々しいカッコの中は計算するまでもなく 2 なのであるが)

これを、"対等性の直感" でいうと、

「各チームは対等であり、決勝に残る確率は  \frac{1}{8}。決勝戦は 2 チーム参加するため、 p=\frac{2}{8}=\frac{1}{4}

ありうる誤答

このような誤答が考えられる。

「各チームは対等なので、決勝戦に残る確率は  \frac{1}{8} である。」

要するに、「2 をかけるのを忘れませんか? なぜ 2 をかけるのかわかりますか?」ということである。
少なくとも私はー未熟さゆえかもしれないがー初めてこれを見たときにそう感じた。対等性という直感の空漠たる様を感じたのである。(直感の感覚なのでメタ感覚である)

先に見たように、具体的な計算による推論では 2 をかけることはむしろ明らかである。(ー"決勝戦"とは、全てを束ねる根から 1 つ降りた 2 つの広がりのことを指すのだからー)

この推論による裏付けを元に、模糊たる "対等性の直感" の特性をあぶり出してみよう。

<特性 1>
対象が異なるものは "対等" ではない

どういうことであろうか。「決勝戦にたどりつく」という目的において、実は「く」とそれ以外では対等ではないのである。
「く」に B が当たったとして、「決勝戦にたどりつく」とはとりもなおさずトーナメント上右側のノードにたどりつくということである。それに対し、「く」以外ではトーナメント上左側に限定される。つまり、B が当たった場所によって (それが「く」であるか否かによって)、目的地たるノードは都合よく変更されるのである。これは対等ではない。対象は固定されていなければならない。つまり、正しくはこうである。

「決勝戦のうち、トーナメント上左側のノードに到達する確率は、各チームの対等性から  \frac{1}{8}。同じくトーナメント上右側のノードに到達するのも  \frac{1}{8}。ゆえに 2 をかける。」

すなわち、左ノードに着目した時は、「く」を選んだ時の確率 0 を含めての  \frac{1}{8} であり、右ノードに着目した時は、「く」以外を選んだ時の確率 0 を含めての  \frac{1}{8} なのである。ここまでの行程を先は「決勝戦は 2 チーム参加するため」の一言でまとめてしまったのである。(決して同じことを繰り返して言っただけではない。この違い、それこそ「直感」が通ずるであろうか?)

(2) A が あ に入ることだけが決まった。この時、B が決勝戦に残る確率  q を求めよ

これもまず愚直な計算をする。

い〜くのうち、B が特定の 1 箇所に入る確率は、 \frac{6!}{7!} = \frac{1}{7} である。
・い〜きの場合
葉の確率の和はあ〜きで 1 であるから、 1-\frac{1}{2^4} = \frac{15}{16}。よって、 \frac{1}{7}\times\frac{15}{16}
・くの場合
とりもなおさず決勝戦なので、 \frac{1}{7}

よってその和は、 \frac{31}{112}

これを "対等性の直感" では、

「A が決勝に残る場合は、決勝戦右側ノードへ到達する確率であり、対等性から  \frac{1}{7}。また、A が残らない場合は、左右のノード分で  \frac{2}{7}。ゆえに、 \frac{1}{2^4}\times\frac{1}{7}+\left(1-\frac{1}{2^4}\right)\times\frac{2}{7}=\frac{31}{112}。」

これにより、

<特性 2>
固定化されたものの動きを考える

が見える。

すると、

(3) A が あ に入ることだけが決まった。この時、A が B に敗れる確率  r を求めよ

は見えやすくなり、

「A が敗れるのは、優勝しない場合であるから、確率は  1-\frac{1}{2^5} = \frac{31}{32}。そのうち、残りのチームのどれが A に勝つかは対等であるから、 \frac{31}{32}\times\frac{1}{7} = \frac{31}{224}

愚直に計算して裏付けをするのは読者への練習問題とする。

終わりに

いかがであったであろうか。長くなりそうなので、今回は対等性の直感の具現化に的を絞った。
次回は状態遷移と確率漸化式について書く (予定である)