ゆるふわブログ

プログラミング,大学の勉強,日常生活で感じたことをゆるふわに書いていけたらなと思います.技術的に拙いところがあっても温かい目で見守っていただければ幸いです.

pV 図上の吸発熱の判定

こんにちは,Ysmr-Ry です.
今回は僕が高校のとき曖昧だったことをまとめてみたいと思います.
意外とコレがなかなか教えてくれなかったりする.

話題は高校の熱力学です.(高校の熱力学の基礎的な知識を仮定します)
pV 図というのを書くじゃないですか.囲む面積が仕事になるので…
大学に行くとエントロピーという状態量を習って,TS 図とかいうのもかけたりするんですね.
それは囲む面積が熱を表すんです.pV と TS どちらも次元がエネルギーになってるからなんですけど.

つまり高校ではエネルギーを供給する熱と仕事のうち仕事にフォーカスを当てて,そちらをわかりやすいようにしてるのです.物事というのは往々にしてトレードオフであり,そうすると熱がわかりにくくなってしまうんですね.

今回はそのわかりにくい熱のお話です.

熱力学とは

熱力学というのは系の熱平衡状態を仮定して,状態量というマクロな少数パラメータで熱力学的状態を記述し,その上での法則を考えようというものです.モル数を固定すると,状態量としては,圧力  p,体積  V絶対温度  T,内部エネルギー  U などがあります.(高校で出てくるのはたぶんこれだけ)
大学に行くともっとたくさん出てくるのですが… そのうちで最も重要なのがエントロピー  S です.まぁざっくり言うと熱を司り,エントロピーが変化しないのなら熱がなく断熱過程です.(ここではその程度の認識で十分)
で,状態量の自由度は 2 なのです.状態量としてはいっぱいあるのですが,そのうちの 2 つの量がわかれば,他の状態量は既知の状態量との関係式をもとに原理的に決定できるのです.(僕はこういう理解なのですが間違ってたら教えてください)
冒頭で pV 図や TS 図が出てきましたが,これらは 2 次元平面です.平面上の 1 点を与えれば,実数 2 つ分の情報量を与えることができ,それが熱力学的な状態と 1 対 1 に対応しているというわけです.
で,高校での主役は pV 図です.その上での熱の話をしたいのです.熱を司るのはエントロピーなのです.
あらわに目にする状態量はこの場合  p, V なわけですが,その裏で  S が働いているという構図です.
 p, V S の関係を熱力学的な法則から考えたいのです.
まずは,"あらわでない状態量が裏で働いている" 様を体感してもらいましょう.

等温過程

あらわでない状態量として,絶対温度  T を考えます.
例えば, T=298K の状態を集めてくると pV 図上ではどうなるのでしょうか.熱力学的状態は pV 図上の 1 点に対応しているので,pV 図上の領域になることは容易にわかります.
それに加えて,自由度が 2 であることも考えると,そのうちの 1 つである  T を固定しているため,実質的な自由度は 1 になります.この場合自由度を次元と置き換えることができ,1 次元,すなわち曲線になることが予想されます*1
高校物理の熱力学で考える作業物質は理想気体がほとんどですから,具体的な曲線は Boyle の法則が与えます.
Boyle の法則により,等温であるとき, pV が一定となります.
 xy 座標平面で言えば  xy=const. であり,これは反比例のグラフです.(直角双曲線) (曲線にちゃんとなった)
また,理想気体の状態方程式から, pV の値は  T に比例します.
よって, T をとびとびに増やしてやると,このように平面を覆っているのがわかります.(一つ一つが  T が一定な状態を集めた双曲線)

右上に行くほど一定である  T の値が大きくなります.
これが "あらわでない状態量が裏で働いている" 例です.

断熱過程

では,裏で働いている状態量がエントロピー  S である場合を考えましょう.
熱の議論をするためには基本的に熱力学第一法則から出発しなければなりません.
熱力学第一法則は内部エネルギーの変化を  dU,気体がする仕事を  d'W,熱を  d'Q として, d'Q=dU+d'W となります.高校では  \Delta を使って書いていましたが,厳密には微小量です*2.ここで  d'W = pdV です.作業物質は理想気体なので, dU = nc_VdT です.( c_V は定積モル比熱)
すると,
\begin{align*}
\frac{d'Q}{T} &= nc_V\frac{dT}{T}+\frac{p}{T}dV \\
&= nc_V\frac{dT}{T}+nR\frac{dV}{V}
\end{align*}
1 行目から 2 行目へは状態方程式  pV=nRT を使いました.
両辺を積分すると,
 \begin{align*}
\int \frac{d'Q}{T} &= nc_V\log T+nR\log V \\
&= nc_V\log TV^\frac{R}{c_V} \\
&= nc_V\log \frac{pV^\frac{c_V+R}{c_V}}{nR}
\end{align*}
これが断熱で 0 ならば,Mayer の関係  c_P = c_V+R と比熱比  \gamma=\frac{c_P}{c_V} を使って, pV^\gamma = const. です.
Poisson の式として教科書にぽつりと載っていたりします.この式の表す pV 図上の曲線を断熱曲線といいますが,そのある接点での接線の傾きは, \frac{dp}{dV} = -\gamma\frac{p}{V} になります.接点の表す状態から接線に沿って進むことは断熱過程を表します.その点からの過程においてこのラインが吸発熱の境界線になります.
ちなみにエントロピーの定義が  \int \frac{d'Q}{T} だったりするので,いわば "裏でエントロピーが働いている" 曲線なわけです.

変形の仕方を少し変えると,
\begin{align*}
d'Q &= nc_VdT+pdV \\
&= nc_V\frac{Vdp+pdV}{nR}+pdV \\
&= \frac{c_V}{R}Vdp+\left(\frac{c_V}{R}+1\right)pdV
\end{align*}
となります.1 行目から 2 行目へは,状態方程式から, dT = \frac{d(pV)}{nR} = \frac{Vdp+pdV}{nR} を使いました.
 d'Q > 0 で吸熱のときは,
 \begin{align*}
\frac{c_V}{R}Vdp+\left(\frac{c_V}{R}+1\right)pdV &> 0 \\
\frac{dp}{dV} &> -\gamma\frac{p}{V}
\end{align*}
となります.
 d'Q < 0 で発熱のときは  \frac{dp}{dV} < -\gamma\frac{p}{V} です.
つまり,ある 1 点の状態からの過程は,そこを接点とする断熱曲線の接線よりも右上ならば吸熱,左下ならば発熱なのです.

図の紫の曲線が断熱曲線です.オレンジの点の状態から,紫の接線に沿って進めば断熱過程,青い線に沿って進めば吸熱,赤い線に沿って進めば発熱です.

つまり,

このように,青い吸熱の領域と赤い発熱の領域に分けられているイメージです.(この場合はオレンジの 1 点に関しての話です.)

おまけ

以下のような熱サイクルを考えてみましょう.

f:id:Ysmr_Ry:20171231030407p:plain

先ほどの話から,左,上に進む過程はそれぞれ発熱,吸熱と決まりますが,斜めの過程はそうとは限りません.
特にこの場合,途中で切り替わるようにできています*3.切り替わるのはこの斜めの線と断熱曲線が接している点です.

右下の方のオレンジの点が切り替わる点です.試しにそれよりも左上のもう 1 つのオレンジの点を見てみましょう.
この点を通る断熱曲線の接線がオレンジの線です.この線よりも熱サイクルの青の斜めの線の方が右上にあるので,この点では吸熱です.接点をすぎた先の点では発熱に切り替わります.
これは, \frac{d^2p}{dV^2} = \gamma\frac{p}{V^2} > 0 より断熱曲線が下に凸なことによります.

理想気体の場合  \gamma=\frac{5}{3} なので*4,この斜め線の方程式と Poisson の式を連立すれば切り替わる接点の座標がわかります.計算すると  (\frac{15}{8}V_0,\frac{9}{8}p_0) であり,この熱サイクルの熱効率は  \frac{48}{97} となります.(間違ってたら教えてください)

*1:ここで直線といいたくなるかもしれませんが,途中折れ曲がっていてもよく,折れ線を限りなく細かくしていくと曲線になるので一般には曲線です.

*2:僕の先生は熱力学第一法則を  \Delta で書くやつを信用するなとまで言っていました.

*3:過去に東工大がこのサイクルを出題したそうです.途中で切り替わるのは出題ミスではと僕の先生が言ってました.

*4:ここらへんは統計力学の結論です.